2013年4月27日土曜日

『モンスター』

『モンスター』
百田尚樹 
幻冬舎文庫

2013年、『海賊とよばれた男』で本屋大賞を獲得した百田尚樹の小説。
今月末に映画化される作品である。

かつてモンスターと呼ばれた女がいた。
容姿が醜く、周りからはいじめられ、終いには家族からも縁を切られた。
あまりよい思い出のない故郷を後にし、上京する。
上京すると、世界ではやはり容姿がものを言うことを改めて痛感する。

その女、和子は上京し、整形と出会う。
全てを整形手術に捧げ、美貌を手に入れていく。
誰もが羨む美人と化した和子は、これまでイジメをされてきた相手等に復讐を始めるのだった。

単純に、一般人が足を踏み入れにくいとされる整形の世界を細やかに描いているため、
非常に新鮮である。
女は顔なのか、美とはなんなのか、といった問いを与えてくれる。

確かに現代では、顔が重要だ。初対面同士では第一印象が最も重要であるなど、社会のあらゆる場面で、俗にいうイケメンと美女は得をしている。
これは事実だ。

生まれながらにもった容姿と整形によって作られた容姿。
ほとんどの人は後者に嫌悪感を抱く可能性が高い。
しかし作中に出てくる、美容整形外科の医師の言葉が響く。
「なんの努力もしないで手に入れたものと、血のにじむような努力をして手に入れたもの、どちらが評価されるべきなのか」と。

確かに金さえあれば、外見上のものは全て手に入れられる。
しかし和子は和子のままであって、これまで育ってきた内面は、その人が生きてきた結果でもあるため、簡単には変わらない。
そんなジレンマを頭のどこかに持ちつつも、恐ろしいほどの信念で外から変わっていこうとする姿を描いている。

外見でなく内面を重視すると言う男は多いが、それはほとんど建前である。
レストランに行って美人に対応されれば当然うれしいし、美人が困っていたら積極的に助けようとする。
現実世界にも随所に見られる男の愚かさを描いている点も面白い。


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