2013年4月29日月曜日

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
村上春樹

ミーハーである私は、発売直後に手に入れるわけでもなく、根っからの村上ファンであるわけでもない。ただミーハーなのである。
だからこの時期に買い、読んだ。

既に多くの知人も読了しており、賛否両論の意見が飛び交っている。
賛否両論の意見が飛び交うこと自体が、彼の影響力の大きさを物語っている。
当然、読者によって感じることは異なる。個人的には、境遇が若干似ているなどとの理由により、今回の作品を堪能した。

少し心に傷というか、引っかかるものを感じる人が読むと良いと思う。
最近言われるリア充という部類の人間よりも。

2013年4月28日日曜日

『現代の金融入門』

『現代の金融入門』
池尾和人
ちくま新書

金融が少し苦手なので、改めてしっかりと学ぼうと手に取った一冊。
入門とあるが、素人にとっては内容が濃い。
むしろ全く金融に関して知識も興味もなかった人が読むと、さっぱり分からないことが多いかもしれない。
ただし、現在しばしば耳にする金融緩和などに関して解説しているため、時事問題の理解には一役買うだろう。

一つ一つ丁寧に理解しながら、ゆっくり読み進めることをお勧めする。
巻末には更に学習する人のために、参考書リストがのっているため便利である。

2013年4月27日土曜日

『モンスター』

『モンスター』
百田尚樹 
幻冬舎文庫

2013年、『海賊とよばれた男』で本屋大賞を獲得した百田尚樹の小説。
今月末に映画化される作品である。

かつてモンスターと呼ばれた女がいた。
容姿が醜く、周りからはいじめられ、終いには家族からも縁を切られた。
あまりよい思い出のない故郷を後にし、上京する。
上京すると、世界ではやはり容姿がものを言うことを改めて痛感する。

その女、和子は上京し、整形と出会う。
全てを整形手術に捧げ、美貌を手に入れていく。
誰もが羨む美人と化した和子は、これまでイジメをされてきた相手等に復讐を始めるのだった。

単純に、一般人が足を踏み入れにくいとされる整形の世界を細やかに描いているため、
非常に新鮮である。
女は顔なのか、美とはなんなのか、といった問いを与えてくれる。

確かに現代では、顔が重要だ。初対面同士では第一印象が最も重要であるなど、社会のあらゆる場面で、俗にいうイケメンと美女は得をしている。
これは事実だ。

生まれながらにもった容姿と整形によって作られた容姿。
ほとんどの人は後者に嫌悪感を抱く可能性が高い。
しかし作中に出てくる、美容整形外科の医師の言葉が響く。
「なんの努力もしないで手に入れたものと、血のにじむような努力をして手に入れたもの、どちらが評価されるべきなのか」と。

確かに金さえあれば、外見上のものは全て手に入れられる。
しかし和子は和子のままであって、これまで育ってきた内面は、その人が生きてきた結果でもあるため、簡単には変わらない。
そんなジレンマを頭のどこかに持ちつつも、恐ろしいほどの信念で外から変わっていこうとする姿を描いている。

外見でなく内面を重視すると言う男は多いが、それはほとんど建前である。
レストランに行って美人に対応されれば当然うれしいし、美人が困っていたら積極的に助けようとする。
現実世界にも随所に見られる男の愚かさを描いている点も面白い。


2013年4月26日金曜日

『職業としてのAV女優』

『職業としてのAV女優』
中村淳彦
幻冬舎新書 2012年

「職業としての〜」といえば、私は職業としての政治、あるいは職業としての学問が真っ先に頭に浮かぶ人間なのだが、今回はAV女優。
著者の膨大な取材データからこの業界がかなり詳しく書かれている。

間違いなく男性ならば必ずお世話になるものだろう。
しかし実際の供給側、つまり女優側は非常に過酷なものである。
もちろん成功し、有名になる女優がいるが、それはほんの一握りに過ぎない。
厳しい世界なのだ。

現在のこの業界を具体的なデータや体験談を豊富に用いて、詳しく解説している。
男性、女性ともに必読の一冊と言えるだろう。


2013年4月24日水曜日

『アルケミスト 夢を旅した少年』

『アルケミスト 夢を旅した少年』
パウロ・コエーリョ

世界で2億部以上売れたと言われている一冊。世界的なベストセラーです。

子どもから大人まで、どの年代が読んでも面白いはず。
子どものころ読み、40代くらいで再び読み返すと、それぞれの時点で違った感情を抱くのではないだろうか。

物語は羊飼いの少年が主人公。
ある日、王様に会い、エジプトにあるとされる宝物を探しにいく。
旅の途中で起こる数々の出来事は彼に影響を与え、その彼の言動は我々読者に影響を与える。
単なるフィクションではなく、人生の参考書と言っても過言ではないくらい哲学的な要素が含まれている。

現時点で強く印象に残った言葉を紹介したい。
おそらく年齢とともに感じることは変わっていくのだろう。

決心するということは単に始まりに過ぎないということだった。決心するということは、まるで、急流に飛び込んで、その時には夢にも思わなかった場所に連れて行かれるようなものだ。- 愛蔵版P82より

自分の運命の実現に近づけば近づくほど、その運命がますます存在の真の理由になっていく - 同P89より



 

 







『就活のバカヤロー 企業・大学・学生が演じる茶番劇』

共著 石渡 嶺司 大沢仁
出版社 光文社新書

就職活動(就活)を企業、大学、学生の視点から書かれたものである。
学生がこれを読めば就活に勝てるというわけではないが、面接などでつまらない失敗はしないと思う。

また企業の採用活動(採活)にも触れられているので、就活を控えている学生にとっては良い情報になるかもしれない。

自分は就活を控えている学生だが、納豆学生にならないように気をつけたい。

2013年4月21日日曜日

『フォークの歯はなぜ四本になったか』

『フォークの歯はなぜ四本になったか』
ヘンリー・ペトロスキー
忠平美幸 訳

実用品に関する進化論を記した本。
タイトルにあるフォークの進化の過程はもちろんのこと、ファスナーやマクドナルドの容器など、本書では幅広く日用品を例として取り扱っている。
常日頃特別意識しないようなものが例として取り上げられるため、本書を通して、
文字通りの”もの”の見方が少し変わった。
デザインは人間の生活に密着しており、デザインは機能よりも失敗に従うという点を著者は大前提として主張する。

今回は本文中で印象に残った言葉を紹介したい。


インダストリアルデザインの世界において、あらゆるものの形を決定するのは一種の流行。受け入れられる形であって、斬新でなければならない。


デザインには数多くの難しい問題があり、必然的にその解決策はデザイナーたちが理解している過去の問題箇所ばかりか、未来へと続く道を彼らがどれだけはっきり見据えているかによって決まる。


デ ザイナーはもっと慎重かつ徹底的に、外見や短期的なデザイン問題の目標の先を思い描き、それらの長期的な結果に目を向けなければならない。ビジネスの世界 に例えて言うのなら、四半期の決算を越えた未来を想像し、いつの日か書かれるであろう社史の見地から物事を考えなければならない。


文明の進歩そのものが過誤と欠点と失敗の相次ぐ修正の歴史。





一体誰のために、何のためにデザインするのか、という点を常に考慮する必要性があるという点が印象に残る。
また、進歩は常に失敗から見いだされ、デザインも例外ではない。この点から、この世に存在する全てのものはそれぞれの多様な見方から評価を下した場合、未だに不完全なものであるということを痛感した一冊であった。


2013年4月20日土曜日

『世界から猫が消えたなら』

『世界から猫が消えたなら』
川村元気

余命わずかと宣告された主人公が悪魔と出会う。
その悪魔の力は特別な力を持っていた。
世界から何か一つのものを消すことで、引き換えに主人公の寿命が延びるという能力。
主人公は、毎日一つ、あるものを消していくが、同時に大切なことに気付いていく。

なんだ、よくある若者のケータイ小説の類いか、と思っていたが、裏切られた。
角田光代の言葉を借りれば、哲学本のようである。
大切なものは失ってから初めて分かる、とはよく聞く言葉だが、改めてそれを痛感した一冊。



2013年4月18日木曜日

『浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ』

『浪費が止まるドイツ節約生活の楽しみ』
サンドラ・へフェリン

 ドイツには何度か行ったことがある。街もキレイで、人々も真面目な人が多いような印象だった。日本やスイスほどではないが、電車もほぼ時間通りに発着する。良い意味でキッチリとしたことが好きな国民性なのだろう。

 第二次世界大戦の敗戦国として、しばしば比較される日本とドイツ。似ている部分もあれば、全く異なる部分もある。本著ではその異なる部分を改めて痛感する結果になった。
いくつか紹介する。

⑴環境に対する意識
 環境先進国と呼ばれるドイツ。国や地方自治体が行う環境政策、あるいは企業による環境への取り組みの積極性はどの国も見習うべき点である。しかしそれらの意思決定を後押ししている、というか、尻をたたいているのは、他ならぬ市民なのである。
 例えば、マスメディアに登場する広告一つでも日本と違いが出る。ドイツでは環境に配慮しているという点が最も強調されるそうで、市民は環境に配慮しているかどうかで、商品購入の意思を固める場合が多い。つまりグリーンコンシューマーが多いため、企業も環境への取り組みを積極的にやらざるを得ないのだ。
 日本でも最近は環境にやさしい、などというフレーズが使われるようになったが、日本人はあくまで、経済的な障壁(環境に配慮した場合にかかる追加的な費用)がなくならないと、購買行動には移さないことが多い。
 また、環境に配慮して生活を送ることは、結果的に節約志向につながると筆者は述べていた。

⑵健康に対する意識
 ドイツ人は健康体を最も重要視する。食事にも気を使っているようだ。
(しかし、私が訪れた際は、バカでかいデザートやバカでかい肉を食っている人々が目に付いたが‥)ドイツ人は朝、昼をしっかり食べて、夕飯を質素にすませる。確かにこれは健康に良さそうだ。
 また、女性に関しては自然体が最も美しいとされ、無駄な化粧などは使用しないようだ。やせ過ぎもあまり良くない。

⑶個人の自立心
 ドイツ人は自立にこだわる。例えば、女性は結婚後も働く。いざというときに自分で生計を立てていけるように備えておく意図があるらしい。女性の社会進出という点では、日本は見習うべき点が多いだろう。
 子育てに関しても同様で、子どもに対しても一人前の自立を求める。なんと12歳で将来の職業を自ら決定し、その道に進むという。ドイツ人は生まれ持った才能を大事にするという国民性が垣間見える。この点は日本と真逆。子どもには子どもの対応を、という色が日本では強い。アメリカでもそうであったが、子どもでも「一人の人間」として対応されることが欧米では多い。

読んでいると、これはさすがにケチすぎる、突っ込みたくなる点も多々あったが、浪費癖のある人に是非一読することをおすすめしたい。


2013年4月15日月曜日

『使ってもらえる広告』

『使ってもらえる広告』
著者 須田和博    アスキー新書

自分はテレビが好きでよく見ている。そのこともありCMも好きでよく見る。しかし最近はインターネットが普及しテレビを見る時間とインターネットを使っていてる時間というのはほぼ同じであるらしい。だから企業の広告費というのもCMからネットの方にシフトしているようだ。

「だから広告の形はその影響もあり変わっているんだ。」というのがこの本である。見てもらう広告から使ってもらう広告への移行がわかる。

本の中で紹介されていて自分が面白いと思った使ってもらう広告をいくつか挙げてみようと思います。
   ①UNIQLOのUNIQLOCKー使ってもらう広告というのはこういうことかというのが一目で          わかる。シンプルだがそこらのCMよりおしゃれ。
   ②ワコールのおねだりメールー男性としてはこれは断れない気持ちになると思う。笑

2013年4月14日日曜日

『15歳からのファイナンス理論入門』

『15歳からのファイナンス理論入門』
慎泰俊

タイトルの通り、中学生向けのファイナンスに関する本。
しかし数字に弱い大学生や大人が超入門書として読んでも面白い一冊です。

印象に残った点をざっとですが、書き留めておきます。

⑴人は多くの場合リターンに慣れてしまっているため、リスクを取ろうとしない。
すると、追加的なリターンに徐々に幸せを感じられなくなる。

これは限界効用逓減の法則のことでしょうか。空腹時に食べる一つ目のおにぎりは非常に美味しいと感じますが、2つ目、3つ目と繰り返すにつれ、その効用は減少するというような例が頻繁に引き合いに出されます。

⑵時間が限られているときの意思決定と、人生における意思決定は共通する。

一見すると、人生は長く感じますが、同時に短いものでもあります。年末になると、一年の短さと時の経過の早さをしばしば感じます。人生も限られた時間、であるので、その中で何ができるか、何をするかなどの意思決定をしていくことは常に重要です。10分などと、明確に短い時間しか与えられていない場合は何を最初にすべきか、をよく考えますが、それをより長いスパンでも考えることは重要です。


他にもファイナンス理論の基礎的なことが書かれているので、ファイナンス理論とはなんだ?という人にとってちょうど良い本だと感じました。

2013年4月13日土曜日

『環境政策学のすすめ』

『環境政策学のすすめ』
松下和夫

元環境省で政策立案に関わり、昨年まで京都大学で教鞭を執っていた松下教授の本。

21世紀のグローバルイシューの一つとされる環境問題に対する環境政策の入門書といえる。
本書はまず環境政策の歴史から入り、その上環境政策の具体的な手法なども紹介しているため、読みやすく、かつ内容も充実している。

巻末には、更に環境政策を学ぶ人に向けた文献リストもあるので、非常に便利。

2013年4月12日金曜日

『リーダーを目指す人の心得』

『リーダーを目指す人の心得』
コリン・パウエル

日本では、国務長官としてなじみ深いパウエルさんの本。
誤解を恐れずに言うと、昨今蔓延る自己啓発本みたいな本となんら変わりはないが、自身の経験が多く交えてあり、面白い。
特に自身が所属していた軍隊内部での話をリーダーシップの実例として多く用いている点が、他のいわゆる自己啓発本やビジネス本と呼ばれる本とは異なる点である。

また政治の舞台の話も多い。ビジネスとは別世界に感じる場所でのリーダーシップを語っている。しかしこの本で書かれていることはビジネスシーンにおいても重要なことであると感じた。


2013年4月11日木曜日

『生きているだけで、愛。』

『生きているだけで、愛。』
本谷有希子


作家であり、劇団をプロデュースする人でもある本谷さんの作品。


美人だが、鬱病を抱えた寧子は津奈木と交際して3年になる。
お互い対照的な性格なのだが、自我に閉じこもっているという点が共通していると感じた。
自分の理想が崩れるのを恐れ、閉じこもる。
外からこれまで自分になかったものが入ってくると拒絶反応を見せてしまう。

誰かに理解されたいという気持ちがあるものの、素直に言い出すことができない現代の若者と重なった。



『フラット化する世界』


『フラット化する世界』
トーマス・フリードマン


世界的なベストセラー。
ジャーナリストのトーマス・フリードマンの本。

グローバリゼーションの進展によって世界はフラット化しつつある。
著者は現在のグローバリゼーションを3.0とし、一昔前のグローバリゼーションよりも更に多くが変化し、あらゆる者がコモディティ化したと述べている。特に従来のグローバリゼーションと比べ、その進展の速度と範囲が桁違いであるとしている。

ビジネスの場で起きた主な変化として著者は10の項目を挙げている。
例えば以下のようなもの。

アウトソーシング
オフショアリング
サプライチェーン
インソーシング
インフォーミング

個人的には特にインフォーミングが今後重要になるのではないかという根拠のない考えがある。笑

本作品が発表された後、世界ではSNSの普及拡大という大きなターニングポイントがあった。作中でもフリードマンはちかいうちにこのSNSのようなものができるといった考えをちらつかせていた。SNSだけが要因ではないが、このようなインターネット上のサービスはある国家の独裁体制を崩すまでの力を秘めるものになった。

これまで所持し得なかった力を一般人が手に入れたことで生じた変化は正と負の両方の面を持っている。フラット化は新たなイマジネーションを生んでいるが、必ずしもよいものばかりではないということ。
作者はジェットブルーの創業者ニールマンとビンラディンを例えにし、それぞれを語る。
フラット化によって生じる正と負のイマジネーション。著者は多くの人々が希望を持ってニールマン型のイマジネーションを目指すことを望んでいる。全てのものがコモディティ化する一方で、イマジネーションだけは特別である。


最後に、作中で印象に残ったフレーズを紹介。

持続的なイノベーションは信頼から生まれる。
リスクを負えないとイノベーションはない。
 - シードマン

2013年4月6日土曜日

『理科系の作文技術』

『理科系の作文技術』
木下是雄

初版は1981年に発効されています。
1981年といえば、レーガノミクスが発表された頃だそう。
その時代から現在まで作文のための必読書と言われている一冊です。

理科系のための、とタイトルにありますが、文系の人々にとってもかなり参考になります。
読み手を理解し、簡潔に分かりやすく書くという点を今強調しています。

新聞や論文など、文章の種類はそれぞれ異なりますが、文章を書くあらゆる人が読むべき本であることに間違いはありません。

特に文章を書く機会が多い学生時代に読んでおきたいですね。



2013年4月5日金曜日

『永遠平和のために』


『永遠平和のために』
カント

古典が今でも読み継がれているというのは、内容が現代にも通用するからですよね。
例えばトゥキュディデスあたりは、現代の国際関係学のほとんどを、彼が生きていた当時既に知っていた、というのは政治学を学ぶ人がよく耳にすることです。

平和とはなんなのか、という問いについて考える場合に、この本は外せないでしょう。
非常に短いのですが、後に多くの議論がなされており、現代の様々な学問分野に影響を与えている一冊です。

特に印象に残っているのは、彼が「公開性」に言及していること。
現代の政治にも共通するテーマの一つです。
近年の急速なインターネットの発展によって、「公開性」は更に複雑かつ重要なものになりました。
今一度、古典を読み返し、過去の出来事やそこから生まれた思想などに触れてみる良い機会かも知れません。

『国際紛争』


国際紛争
ジョセフ・ナイ

政治学を専攻している学生でジョセフ・ナイの名を聞いたことのない人はいないでしょう。
これまで国際政治学者はかなり大まかに分けて、リアリストとリベラリストに分かれてきました。
前者の例を挙げるとすればツキュディディス、ハンスモーゲンソー、後者の例を挙げれば、ベンサム、ミル、ウッドローウィルソンあたりですね。

一般的にナイは、コへインとともにネオリベラリズムの代表として挙げられます。
ネオリベラリズムとは簡単にいえば、国家の行為は経済的相互依存や国際機関によって制約されると見るような考え方です。
本書ではリアリズムとリベラリズムについて言及し、さらに両者は現代社会を説明するのに限界を迎えていると説明します。
またナイは現実を常に直視しており、現実に起きたことから理論を導きだしています。

ペロポネソス戦争から説明は始まり、第一次世界大戦、第二次世界大戦と歴史的事件を背景に国際政治学はいかなるものか、またそれぞれの考え方を本書では紹介しています。
まさに国際政治の教科書といっていい一冊でしょう。

『アホ大学のバカ学生』グローバル人材と就活迷子のあいだ


『アホ大学のバカ学生』グローバル人材と就活迷子のあいだ

近年話題にあがりやすい、大学教育のあり方。
また、それと密接に関わっている就活の話です。

どれも現役の大学生、就活生にとっては耳を塞ぎたくなるような内容であると同時に、
どうしても耳を傾けてしまうような話題ですね。
学生、大学組織の両者を風刺したこの作品は、誰が読んでも面白いものだと思います。

まず、最近の学生に関してですが、
近年SNSやインターネットの普及拡大によって、若者の生活は大きく変化しました。
実際の場で意見を言えない人もTwitterFacebookに意見を投稿し、何かを主張する風潮が出来上がってます。
まさにデジタルネイティブと言われる若者たちですが、
一方で人間として最低限必要なスキルや常識が欠如しているとしばしば指摘されます。
(私もしかり)


次に大学に関してですが、
本にも出てきますが、近年の大学数は増えているそうです。
少子化の影響で小学校中学校高校それぞれの数は減っているのにもかかわらず。
確かに聞いたことのないような大学が多く出てきたし、
中には卒業生を一人も出さずに廃校してしまった大学もあるというのは驚きに値します。
大学は多様化し様々な学部を携え、多くの教育システムが生まれていることは間違いないでしょう。
例えば、大学生の基礎力を徹底的に養う大学などが作中で挙げられておりました。

また著者は近頃上昇傾向の国際教養大を例にとり、グローバル人材育成の重要性を
指摘しています。
私の友人に早稲田の国際教養学部の学生が多くいますが、天文物理学から、開発経済までと幅広いことを学んでいるようです。
一方で専門性の欠如が指摘されていますが、他の一般有名大学に通う学生にも専門的な知識など期待できるのでしょうかと言われると‥ 特に文系学生。


どちらにせよ、今後日本の大学が衰退するのは間違いないことです。
他のアジア諸国の大学が授業を英語で行い、積極的に海外の大学と提携しており、
グローバル化に合わせた教育を念頭に置いているためです。
これらの新興国の大学に抜かれるのは時間の問題であり、既にほとんどが負けていると言っても過言ではないでしょう。
また、日本人の優秀な学生の海外流出も増加する気がします。

これまではアメリカやヨーロッパへの流出が主流でしたが、
よりコストの低いアジア諸国の大学への進学や留学が増える可能性もありそう。

またビジネスの場に置いても新興国市場で通用する人材を求めているため、
このような国々で経験を積んだ学生は重宝されますよね。

そのような潮流の中で、日本の大学は一体どのような手を打つのでしょうか。
今後の大学教育に注目していきたいと思った一冊でした。

『格闘する者に◯』


格闘する者に◯
三浦しをん

出版社を目指し、就職活動をする女子学生を取り巻く物語。
しかし同時に彼女はある地域で有名な一家の娘でした。
伏線というのか分かりませんが、その点が物語を面白くしています。


就職氷河期と言われた時代を過ごした三浦さんのデビュー作。

『舟を編む』


『舟を編む』
三浦しをん

自分の知らない社会の側面を教えてくれるのが本のいいところ。
2012年本屋大賞という帯が目に入ったため手に取ってみることに。

言葉はその国の文化を象徴するものであり、言語によって人々は多少の束縛を受ける。
日々変化し、追加されていく言葉は、社会と連動している。
膨大な数の言葉を一つにまとめたのが辞書。
『舟を編む』は辞書制作に人生をかける人々を描いた作品。

作品中に出てきた、辞書ごとに性格がある、というのは非常に興味深い点で、確かに幼少の頃、国語辞典によって同じ言葉でも解説が違ったな、と曖昧ながら思い出す。
現在個人的に最も多く使用するのは英語の辞書だが、制作した会社、人々によって解説文や例文はだいぶ異なるのはどの言語の辞書も同じだ。

この作品を読んでいると、自然と一字一句の意味を咀嚼しながら読もうとしてしまう。

現在では多くの人々が2~3カ国語ができる時代が到来し、日本人でも未だマイノリティだが、外国語ができる人々が増えている。
やはり言語を多く知っているということはより多くの考え方、価値観、文化に触れることができる入り口、または手段となるため、今後不可欠なスキルとなるだろう。その一方で、母国語に関して関心を持ち、知らない外国語を調べるような気持ちで、日本語の意味を改めて、咀嚼していこうと思う良いきっかけとなった。