2013年7月27日土曜日

娼年

石田衣良

バーでアルバイトをするリョウは、ある日突然訪れた男性クラブのオーナーに誘われ、
男娼として働き始める。

男娼として働くうちに、女性が見せる多様な快楽を目の当たりする。
自分の見た事がない世界をさらに見たいという欲望から、仕事を続ける事になるリョウの前に、大学の友人であるメグミが現れ、物語は終盤へと向かって行く。

村上春樹を感じさせた。
リョウは、性などに対して無関心であるが、なぜか色々とうまく行く。
あまりにも現実離れした展開に笑ってしまうこともあったが、
これが自分の知らない現実のどこかでは、本当に起こっている話であるのかもしれないと思うと、リョウのようにもっと知りたいという感覚を覚える。

そもそも現実離れした、という場合の現実とは、自らがそれまで生きてきた人生経験に基づいている。したがって各々が考える現実には、だいぶ個人差がある場合が多いと言える。男娼とは言わないまでも、さらに多くの事を若いうちに経験しておきたいと思わせるような一冊だった。


ナショナリズムの克服

姜尚中
森巣博

上記の2人が日本のナショナリズムや民族意識などについて対談した内容をまとめた一冊。

ある社会の内部の矛盾を外部化することで、その社会が存続していくという考え方に共感を覚えた。

これは民族という要素だけではなく、国際関係にも言える事だが、都合の悪い事があれば、すぐに外部化する点は特に日本人において顕著であると感じた。

日本人は、その領域の内側と外側を区別するために、無意識に境界線を引いてしまいがちである。


物語 タイの歴史

柿崎一郎 著

東南アジアの雰囲気が好きな日本人は多いと思う。
特に若者にとっては、物価や治安の面から、旅行しやすい地域でもある。
また、個人に限らず多くの企業が東南アジア地域に進出をしている。

単なる旅行でも目的地の歴史や情勢を知ってから行くとさらに楽しめるものだ。
タイを旅行するにあたって、本書を購入した。

本書で強調されているタイの姿とは、世渡り上手な姿である。
特に13世紀以降のタイ(それに相当する王朝)はその世渡り上手さを生かして、
自国の発展と安全保障を確立してきたと言える。

特に、フランスとイギリスの緩衝地帯として存在していた点などを見ても、他の諸国家の力をうまく利用してきた事がうかがえる。

後半では、タクシン政権の話を中心とした現代のタイを書いている。
世界銀行が言うような、中所得国の罠に嵌りつつあることを感じさせた。



2013年7月4日木曜日

『23分間の奇跡』

ジェームズ・クラベル
青島幸男 訳

The Children's story......but not just for children

そんな言葉が表紙に書いてある。

ストーリーは単純だ。
幼い児童のクラスに新たに担任の先生として赴任した。
これまで子どもたちが教わっていた教師とは全く違う雰囲気を醸し出し、違った意見を述べる先生がやってくる。
新しい先生によって、子どもたちの考え方は、たった23分間で変わってしまうという教育の持つ恐ろしい力を書いたものだ。

Amazonなどのレビューでは、大人も考えるべき、教育の問題!などと、書いている人々が多くいた。確かにそうなのだが、これは教育の場だけに当てはまることではない。

大人でさえも、日常のあらゆる場面でバイアスにかかっている。最近で言えば、反日デモを煽ったマスメディアが例として挙げられるだろう。
これまで持っていた考えを簡単に変えられてしまい、加えて自分の認識が変わっていることに気づかない人すらいる。

教育の問題に限らず、世の中のあらゆる場面で、洗脳に近いことが起きている。
その意味で私はnot just for children という言葉を受け止めたいと思った。

2013年7月3日水曜日

『こんな日本をつくりたい』

石破茂×宇野常寛

日本のカレーをインド人に食べさせる映像があった。
インド人はうまいといいながらカレーを食べていた。
本場の味を取り入れつつ、新たな風を吹き込んで発展させていく日本のスタイルである。

石破カレーというものがある、その名の通り、自民党の石破茂氏が党大会の前に、自民党本部で配布するカレーのことだ。大のカレー好きである石破さんは学生時代、毎日のようにカレーを食べていたという。

その石破さんと注目の若手論客である宇野氏の対談を収録した一冊である。
生まれた時代も、育った環境も違う両者がどのような対談をするのか興味深かったため、手に取った。

社会保障、雇用、農政、国防、地方自治、選挙制度など、対談の内容は多岐にわたる。地元選挙区ではいわゆる農業票が強い石破さんだが、TPPに参加し、農業を外に広げていく考えを持っているという点は、若い世代(一纏めにできるないとは思うが)の意見と共通する印象を受けた。

一方で、宇野氏の意見などと食い違うこともあった。それは至極当然のことである。

若い世代と年配の世代、世代間格差が問題となっている今だからこそ、世代を超えた対話が必要であるように感じた。

お互いの意見を尊重し、違った意見の中にもいい点を見つけて取り込んで前進していく。
まさに外国の文化を取り入れて発展していく料理の世界のように、今後の政治に期待したいものである。

2013年6月26日水曜日

『What I Wish I Knew When I Was 20』

Tina Seelig

宝くじで高額当選した人が、そのコツを語る番組があった。
いくつかの実用的なコツとともに、過去の当選者が口を揃えて言ったのが、
販売員が笑顔であることだった。

そもそも宝くじの当選確率はどのくらいなのだろうか。
宝くじの規模によって異なるが、一説に1等は1000万分の1とも言われている。
1枚300円のくじを買うリスク。

ただし裏を返せば、リスクを冒さなければ、確率は0である。
宝くじはどうかわからないが、
ことによってはリスクをとらないことが、一番のリスクとなる場合もあるだろう。

カリフォルニアでは、リスクを冒して自らの可能性に挑戦し続けるマインドが根付いている。その環境を求めて、多くの人間が世界中から技術や能力を持ちよる。
失敗を恐れず、とにかく動く、そんなエネルギッシュな場所で、活動的な学生が集結し、
起業学を学ぶクラスがあるという。

スタンフォード大学のティナシーリグ教授の起業論はNHKでも放送された話題の授業だ。
生徒がビジネスの場で必要なスキルをロールプレイングなどを通して学び、最終的には起業体験をする。
授業の一部では、地の利を生かして実際の起業家が授業に招き、ディスカッションも行うという魅力的なプログラムだ。

起業家になりたい人に起業について教える。そんな教授は客観的にみれば、間違いなく成功者だろう。
ただし彼女は医学部卒で脳に関する研究をしていたのだ。(今もしているはず)
多才の一言に尽きる。

そんな教授がこの本を通して、学生に向けて、いくつかのアドバイスをしている。
リスクを取ること、失敗を恐れないこと、そして常にワクワクしていること。

リスク、失敗、期待、あれ宝くじだ。
といった発想力のない平凡な私に大きいことはできないので、
せめて動き回るところだけは真似して、
とりあえず宝くじでも買いに行こうと思う。




2013年6月15日土曜日

『ソーシャルメディアマーケティング』

ジムスターン
酒井泰介

近年需要の高まるソーシャルメディアマーケティングの第一人者、ジムスターンの本。

戦略•戦術のたて方、そしてそれらの効果測定について書かれている。

日本でもようやくここ数年で、SNSやブログなどを積極活用したマーケティング戦略が取られるようになった。欧米に比べて4〜5年ほど遅いのではないかと感じさせる。ようやくマスメディアも、ソーシャルメディアが盛り上がっているという特集番組を放送するようになった。
中でも顕著なのは、SNSなどを批判するために、若者を引き合いに出し、これまで我々が築いてきた生活とは違う化け物のようだというメッセージを盛んに発信していることだ。

話が少しずれたが、今後はマスメディアとソーシャルメディアが協同していくべきである。それはニュースに限らず、マーケティング戦略に関してもそうだ。

ソーシャルメディアは、市民に「参加」という大きな要素を与えた。
商品やサービスを買うのは消費者であり、消費者の声をいかに集め、いかにその声に答えていくかが重視される時代において、ソーシャルメディアは今後も大きな役割を担うだろう。

ジムスターンが言うように、ソーシャルメディアで情報を発信すればオッケーというのは違う。その効果測定を行い、次につなげていくことが最も重要である。

現在のほとんどの日本企業は、情報を発信してそれで終わり、というマーケティングが多いように感じる。
これは顧客第一と表面上だけで言っている現れなのでは、と疑ってしまう。